会長挨拶

『くまもと訪問リハビリテーション研究会』は、熊本における訪問リハビリテーションの普及・啓発と質の向上を目的として、平成167月に設立しました。年23回の研修会とニュース発行という細々とした活動の会ですが、研修会では全国を代表する講師をお招きし、全国の動向や在宅分野での先進の考え方、手法を学んでいます。また研究会の場が各事業所の情報交換の場となり会員同士の連携に一役かっています。

さて訪問リハビリテーションの歴史を振り返ってみますと、セラピストの訪問が診療報酬上位置づけられたのは、昭和63年の寝たきり老人訪問理学療法指導管理料でした。それ以前にも保健師の訪問にボランティアとしてセラピストが同行していた時代があります。しかし彼らはアウトローと呼ばれ当時のセラピストの中では異端児扱いでした。その後平成4年に老人訪問看護ステーションが創設され、OTPTは訪問看護の一環としてリハサービスの提供が可能となりましたが、医療機関、介護老人保健施設と慢性的なセラピスト不足の状況で、訪問に関わるセラピストはほんの一握りでした。実は公的介護保険制度創設の話が出始めたころ、現在話題となっている訪問リハ単独事業所ができるかもしれないという話はでていました。しかしながら当時訪問リハに従事していたセラピストは日本全国でわずか300人強、とても介護保険サービスの一端を担えるマンパワーではなかったのです。その後、平成14年に全国訪問リハ研究会が発足、同年にPTOTSTの3協会合同で、初めて訪問リハ専門機関設置要望書が厚生労働省に提出されています。平成16年にはSTの訪問も制度化され、訪問リハに従事するスタッフは徐々に増加していきました。この年に本会も設立しました。続いて平成18年の介護保険改正では、リハマネジメントと短期集中リハが導入され、STの介護保険からの訪問も認められました。このようななか、同年にいわゆる訪問看護7(訪問看護ステーションからのOTPTSTの訪問)の50%規制が施行され、訪問の伸びが危ぶまれました。しかしその後も利用者の強い訪問リハニーズに押され、訪問リハを提供する事業所数は増加しています。そして平成21年の改定では訪問看護750%規制は撤廃され、訪問看護ステーションの管理者要件も一部見直され、条件付きでセラピストの管理者も設定されたところです。

 しかしながらまだまだ訪問リハサービスが整ったとはとても言えません。少なくとも現在の提供量の45倍の量が必要ですし、制度の見直し、教育体制の充実、関連職種への啓発など課題は山積しています。

 さらに平成223月に出された地域包括ケア研究会報告書では、2025年の地域包括ケアの姿として、様々な生活支援サービスが日常生活圏域で適切に提供できるような体制を謳っています。その中で特別な機能を持たない介護保険3施設を「ケアが組み合わされた集合住宅」とし、外部サービスによるリハ、看護、介護の提供体制を提示しています。今後このような体制が整備されていくとすれば訪問リハの需要はますます高くなると同時に競争により真の実力が問われる時代となるでしょう。

 本会は小さな会ですが、皆さんと一緒に考え、これらの山積している課題の解決に、少しでも役割を担えればと考えています。

 

                                                                 会長 野尻晋一